グラフィティ仏陀
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作家ステートメント
30年前に画家を目指した事がある。
学生時代に野良犬の様な状態でイラストレーターの谷口広樹師匠に拾われて、一度はデザイナーを目指したものの画家の夢は捨て切れず、27歳の時にデザイナーを辞めて絵描きを目指したが、それもまたなりきれず、友人に頼まれてバイト気分で作っていたCGがたまたま受けたようで、それなりに売れっ子CGアーティストとして活動していたら、CG作れるんだから演出もできるでしょ?と勧められ、いつの間にかCMディレクターになっていて、気が付いたら30年経っていた。しかしいつまで経っても私の心の中には芸術があり、もうそれがあれば他のものは何もいらないという事も確信し、死ぬまで芸術しようと心に決めた訳です。
ずっと描き続けていたF100号のキャンバスに青いスプレーを吹いている時ふと思った。
「もしかしたらこの絵には結界が張られているのではないだろうか?」
絵の空間を狭めているものはある種の結界が関係しているのではないかと思い、自ら作った又は描いているうちに自然と作られてしまった境を崩し広げる事に焦点を絞り、流れが止まってる部分を崩して描き足し、逆に流れ過ぎている部分は止める。少し良い感じに描けているなと思う部分(雑念)は全て消していく。その行為を繰り返していくと必然的に「ここまで」という新たな境が出来てきた。
結界とは、聖なる領域と俗なる領域を分け、秩序を維持するために区域を限るという意味がある。一見するとこのペインティングの方法は聖なる領域を崩し俗なる領域に場を広げていく様にも見える。しかしこれは、あくまでも「新しく正しい結界を張り直す作業」という意味合いを持つ。
今回の作品は、展覧会タイトル「グラフィティ仏陀」が表す通り仏陀をテーマにしたものとなります。今後の人生において「生」はつねに「死」と隣り合わせであると心に留め、念仏をとなえるが如く芸術に勤しんでいく次第であります。
そろそろ本気出すぞ。